
いのちのご飯とは
ただ空腹を満たすためのものではありません
それは魂を養う祈りのかたちであり
生きるということそのものと向き合う道です
野に芽吹いた菜
大地の中で時を重ねた根
光と風を受けて実った実りたち
その一つひとつが
この星の時間と季節と祈りの記憶を宿し
私たちのもとへとやって来ます
水を汲み
火を起こし
手を使い
息を調え
その食材に心を重ねるとき
それは料理ではなく
魂との対話となります
一口のご飯を口に運ぶとき
私たちは自然とひとつになります
この身を生かすために
いくつもの命が
静かにその生を差し出してくれたことに
気づくからです
いのちのご飯には
この世界に確かに存在している
見えないもののすべてが宿っています
風の声
水の記憶
大地の震え
火の熱
祖先の祈り
未来への願い
それらがひとつの膳に集い
私たちの魂に
深い安らぎと目覚めを届けてくれるのです
食材はただの物質ではありません
それは
生きてきた証であり
誰かの手と心がつないできた命の連なりです
いのちのご飯は
その連なりを尊び
感謝し
いただくという神聖な行いを通して
私たちをこの世界の一部へと還してくれます
現代の世界はあまりにも速く
あまりにも多くのことを求めてきます
けれど
いのちのご飯は
その反対にあります
それは静かで
小さくて
ひとさじずつしか進まないものです
しかし
その静けさの中にこそ
本当の豊かさが宿っているのです
ご飯の湯気の向こうに
誰かの笑顔を思い出すとき
旬の香りに触れて
遠い土地の風景がよみがえるとき
この一口が
誰かを守り
癒し
未来へと希望を手渡す橋となるとき
私たちは思い出します
食べるということは
生きるということなのだと
いのちのご飯の真髄とは
このいのちが
すでに神聖であるということを
思い出すための祈りの儀式です
誰かのまなざしに育まれ
自然の恵みに抱かれ
手のひらで整えられた食事を
いまここで
丁寧にいただく
その行いそのものが
魂の姿勢を美しく整えてくれるのです
あなたが今日食べる一膳が
あなたの魂を育てています
そして
その食卓の灯りが
誰かの心に
やさしく火を灯します
いのちのご飯とは
生きることを美しくする智慧であり
いのちの重さとやわらかさを
そっと教えてくれる
この世界でいちばん静かな祈りなのです